食品自給率が低い食品は何か(米は95%、胡麻は0.05%)
「食品自給率」の話題が出るたびに気になっていることがある。
自給率を高めたいという声があるからには、何かがたりないんだろう。いったいどの食品がどれくらい不足しているのか?対象の食品によってそれぞれ対応の仕方が違うのではないだろうか。
「自給率40%を切る!」といわれても『あれ、お米って100%じゃなかった?油はメチャクチャ低いはずだけど…』と思っていたので、調べてみた。ソースは農林水産省/日本の食料自給率。
PDFファイルなので、項目別の部分のみ表に起こしてみた。あと横に長いと見難いので平成13年〜16年は省略(大きな数字の変動も無いし)。
食料自給率の推移
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/sankou4.pdf
昭和40年度 | 50 | 60 | 平成7年度 | 12 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
米 | 95 | 110 | 107 | 104 | 95 | 95 | 94 | 94 | 95 |
うち主食用 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | ||||
小麦 | 28 | 4 | 14 | 7 | 11 | 14 | 13 | 14 | 14 |
大麦・はだか麦 | 73 | 10 | 15 | 8 | 8 | 8 | 8 | 9 | 11 |
いも類 | 100 | 99 | 96 | 87 | 83 | 81 | 80 | 81 | 81 |
かんしょ | 100 | 100 | 100 | 100 | 99 | 93 | 92 | 94 | 96 |
ばれいしょ | 100 | 99 | 95 | 83 | 78 | 77 | 76 | 77 | 76 |
豆類 | 25 | 9 | 8 | 5 | 7 | 7 | 7 | 7 | 9 |
大豆 | 11 | 4 | 5 | 2 | 5 | 5 | 5 | 5 | 6 |
野菜 | 100 | 99 | 95 | 85 | 81 | 79 | 79 | 81 | 82 |
果実 | 90 | 84 | 77 | 49 | 44 | 41 | 38 | 40 | 41 |
みかん | 109 | 102 | 106 | 102 | 94 | 103 | 94 | 99 | 96 |
りんご | 102 | 100 | 97 | 62 | 59 | 52 | 52 | 49 | 54 |
肉類(鯨肉を除く) | 90 | 77 | 81 | 57 | 52 | 54 | 56 | 56 | 56 |
牛肉 | 95 | 81 | 72 | 39 | 34 | 43 | 43 | 43 | 44 |
豚肉 | 100 | 86 | 86 | 62 | 57 | 50 | 52 | 52 | 52 |
鶏肉 | 97 | 97 | 92 | 69 | 64 | 67 | 69 | 69 | 70 |
鶏卵 | 100 | 97 | 98 | 96 | 95 | 94 | 95 | 96 | 96 |
牛乳・乳製品 | 86 | 81 | 85 | 72 | 68 | 68 | 67 | 66 | 70 |
魚介類 | 100 | 99 | 93 | 57 | 53 | 51 | 52 | 53 | 53 |
うち食用 | 110 | 100 | 86 | 59 | 53 | 57 | 60 | 62 | 62 |
海藻類 | 88 | 86 | 74 | 68 | 63 | 65 | 67 | 71 | 71 |
砂糖類 | 31 | 15 | 33 | 31 | 29 | 34 | 32 | 33 | 38 |
油脂類 | 31 | 23 | 32 | 15 | 14 | 13 | 13 | 13 | 13 |
きのこ類 | 115 | 110 | 102 | 78 | 74 | 79 | 81 | 83 | 86 |
米はやはり高いナァ。最近は在庫を取り崩して足しているらしいけど*1。
で、他に高いのはイモ類81%、野菜82%、みかん96%、鶏卵96&%、きのこ類86%など。
逆に低いのは小麦14%、大麦・はだか麦11%、豆類9%とくに大豆6%、砂糖38%、油脂類13%。
なぜ自給率が低いのか探ってみる
小麦14%
乾燥地帯向けの作物なので、単純に日本の気候に合わないからのようだ。昭和40年でも28%と低い。主な産地は北海道。
湿潤気候で小麦と聞くと麦角菌の繁殖を思い出すんだけど、日本でも暖かい地域で栽培しようとすると発生するのかなぁ。
大麦・はだか麦11%
小麦と違ってグルテンがほとんど含まれないため、麺よりビールや発酵食品の原料向け。「近年までは麦飯として米と混炊して特に農村部では重要な主食とされた。」とあるように昭和40年度の自給率は73%だが、「麦飯は白米の飯に対して農村的な格の低い洗練されない食品とされ」だんだんと白米が優勢となり、人気がなくなり生産量も減っていった。
参考:オオムギ - Wikipedia
近年は「農林水産省/「大麦・はだか麦の消費拡大と安定生産に向けた対話集会」の開催について」のような試みをしているようだ。
豆類9%とくに大豆6%
大量に納豆・ミソ・豆腐などになるか思いきや、ほとんどが油になっている模様。
434万トンのうち約308万トンはサラダ油など精油用の原料に使われました。残りの約125万トンが豆腐、味噌、醤油などの食品用に使用されました。
精油用・食品用を合わせた全体で5%、食用に限ると21%ですね(平成17年)。やはり油か…。
砂糖38%
砂糖はサトウキビ由来と、テンサイ(ビート)由来がある。
サトウキビは沖縄・奄美諸島で栽培されている。熱帯、亜熱帯地域の作物で香川県・徳島県が世界におけるサトウキビの商業栽培の最北限らしい。
テンサイは北海道などで栽培されている。寒冷地作物。甜菜糖になる。
これも、国内での生産分布が偏っているね。
油脂類13%
でました、油。記憶の通りやはり低かった。
油の原料になるものが輸入穀物由来なのが原因かな?(菜種、大豆、トモロコシ、オリーブなど)ちなみに、ゴマに至っては自給率0.05%。
参考:ごま食料自給率解説ページ
もしかして、工業用途の油もカウントされている?
雑感
サトウキビやテンサイや小麦など、日本の気候では限られた地域でしか栽培できないものは、品種改良するかその地域で畑を大拡張するしかないのかな。
甜菜糖が日本での生産量の75%を占めているので、温暖化が進んで栽培できる地域が狭まったらまずいのでは…。
胡麻は吃驚するほど低い。ゴマの栽培は易しいらしいので、人件費が安い国に価格で負けちゃうんだろうなぁ。国産胡麻の価格をものすごく上げるか、お米みたいに補助金を出すなどの対応になるんだろうか。価格2〜3倍くらいまでならいいけど、10倍とかになったらさすがに買えないなぁ…。
そういや、項目に砂糖はあったけど塩が無いなー。自給率15%程度といわれているけど、食用としては100%(輸入圧力により80〜85%)。残りはソーダ工業の原料らしい。
参考:塩の情報室
自給率アップするには、供給を増やすだけではなく、需要を減らすって手もあるけど…。パン、うどん、ラーメン。小麦製品大好きなので発狂しそう(笑)
そういや、リンを海水から取り出す技術ってどうなったんだっけ?あと、日本での農業拡張には、飲料水不足の問題もあったような…。
昔農家の子と畑で遊んでいたんだけど、規格外で超大量に捨てられるニンジンがあった。こういう規格外も流通するようにすれば、自給率の数字は上がるね。けど、作物の値段は供給過剰で暴落なんじゃよなー。
北海道は日本の食糧庫なので、大切にしよう。
結論。
食料自給率問題については、カロリーベースと金額ベース、食用と工業用などが混ざっていて、記事ごと・話題にしている人ごとで前提がバラバラ。
*1:「米については、国内生産と国産米在庫の取崩しで国内需要に対応している実態を踏まえ、平成10年度から国内生産量に国産米在庫取崩し量を加えた数量を用いて、次式により品目別自給率、穀物自給率及び主食用穀物自給率を算出している。〜中略〜また、飼料用の政府売却がある場合は、国産供給量及び国内消費仕向量から飼料用政府売却数量を除いて算出している。」とのこと